2度目の初恋
「姫野、ここに座って」
目の前には数学の参考書でいっぱいの白い棚が3つ。
そして、相沢先生。
「今から言う話最後まで聞いてな。」
「は、はい。」
どれだけ大事な話なんだろう。日焼けで皮膚が痛いのに心臓まで跳ね上がっている。
「公平は記憶喪失なんだ。」
「は、はい?」
日本語を喋っているのは分かってるけどうまく聞き取れない。
「もう1回言ってください。」
「公平は記憶喪失なんだ。1年前の事故で。9年間の記憶がないらしい。そしてまだ後遺症が残っているんだ、この話は学校長と俺しか知らない話だ。」
「そ、そんな……」
体が固まっている。脳も動かない。机の1点を見つめていることしかできない。
「でも、夏休み中、俺に電話がきた。最近後遺症の症状がひどいって。そして、姫野と付き合ってることも聞いた。病院に行って精密検査も受けてもなんも変化がなかったらしい。そして言われたんだ、もし俺が学校で倒れたら姫野に記憶喪失のこと言ってほしいと。」
わたしはなんの言葉も出ない。相沢先生は話を続ける。
「入院することを提案した。体が1番大事だからな、でも、公平はそれを断ったんだ。体操も姫野も諦めたくないって。」
「わたしを…?」
「姫野と公平は幼馴染みなんだってな。小学1年生で転校したけど。公平は記憶が全くないんだ。だから姫野に申し訳ないと言ってた。電話で泣きながらな…」
「俺は担任としてまた体操部の顧問として公平にとって1番望んでることをしてやりたい。無理すんなと言いながらも体操部に入ることを許可したんだ。どうしても体操はしたかったらしいからな。部活中に体調が悪くなっても決して誰にも言わず練習し続けるんだから、すごいよ、あいつは。すごい真面目なやつだ。姫野と一緒だな。」
涙が止まらない。言葉がよく出ない、出ないけど涙はすごい出る。なんの感情か自分もよくわからないけど泣くことしかできなかった。
「公平くんに会うことはできないんですか…」
「医者によると、しばらく安静にして集中治療室に運ばれたんだ。意識がまだ戻らないから意識が戻ったら姫野に連絡するからそれから会いに行ったほうがいい。そして青森にいる公平の親にも連絡した。」
「そうですか、分かりました。」
わたしは相沢先生からもらったハンカチを右手で握り締めて数学準備室を出た。
玲那に打ち上げは行かないと連絡して、学校から出た。
帰り道、自分のマンションに行くか、公平くんのマンションに行くか迷った。
公平くんのマンションはオートロックで番号を知ってるから入ろうと思えば入れる。でも、公平くんは病院にいる。
でも、ずっと公平くんを感じていたい。
公平くんのマンションについてそのまま立ち止まっていると
「美羽」
振り替えると、颯汰くんがいた。
「どうしたの?」
「美羽こそどうした、立ち止まって」
「公平くんのマンションに入ろうか迷ってて…」
「あー、公平、病院にいるんだよな。」
「そうだよ」
「俺、知ってた。公平が記憶喪失と戦っていること」
「え、なんで…?」
「4人で横浜に行った時、水族館で公平がその場でうずくまったんだ。それでトイレに行って薬飲んでしばらく休んでた。それで俺に言ってきた。「俺、記憶喪失なんだ。」びっくりして声が出なかった。美羽にずっと隠すことはできないけど言うと別れるのが怖いって。」
「別れるわけないじゃん…」
「そうだよな、美羽は公平だよな。ずっと隣にいてやれよ」
そう言ってわたしの肩をポンっと叩いて帰った。
わたしは、自分のマンションに帰ることにした。
1ヶ月ぶりの自分の家。
久しぶりに掃除をしてお風呂を入ってベッドに入った。
いつも右を向けば公平くんがいた。
公平くんの胸に顔を埋めて寝てた。
それが当たり前だと思っていた。
でも当たり前じゃなかった。
公平くんはわたしのことを考えて、1人で戦っていたんだ…
それにわたしは気づけず…
1番近くにいたはずなのに、すごく遠く感じる。
私はベッドでたくさん泣いた。
目の前には数学の参考書でいっぱいの白い棚が3つ。
そして、相沢先生。
「今から言う話最後まで聞いてな。」
「は、はい。」
どれだけ大事な話なんだろう。日焼けで皮膚が痛いのに心臓まで跳ね上がっている。
「公平は記憶喪失なんだ。」
「は、はい?」
日本語を喋っているのは分かってるけどうまく聞き取れない。
「もう1回言ってください。」
「公平は記憶喪失なんだ。1年前の事故で。9年間の記憶がないらしい。そしてまだ後遺症が残っているんだ、この話は学校長と俺しか知らない話だ。」
「そ、そんな……」
体が固まっている。脳も動かない。机の1点を見つめていることしかできない。
「でも、夏休み中、俺に電話がきた。最近後遺症の症状がひどいって。そして、姫野と付き合ってることも聞いた。病院に行って精密検査も受けてもなんも変化がなかったらしい。そして言われたんだ、もし俺が学校で倒れたら姫野に記憶喪失のこと言ってほしいと。」
わたしはなんの言葉も出ない。相沢先生は話を続ける。
「入院することを提案した。体が1番大事だからな、でも、公平はそれを断ったんだ。体操も姫野も諦めたくないって。」
「わたしを…?」
「姫野と公平は幼馴染みなんだってな。小学1年生で転校したけど。公平は記憶が全くないんだ。だから姫野に申し訳ないと言ってた。電話で泣きながらな…」
「俺は担任としてまた体操部の顧問として公平にとって1番望んでることをしてやりたい。無理すんなと言いながらも体操部に入ることを許可したんだ。どうしても体操はしたかったらしいからな。部活中に体調が悪くなっても決して誰にも言わず練習し続けるんだから、すごいよ、あいつは。すごい真面目なやつだ。姫野と一緒だな。」
涙が止まらない。言葉がよく出ない、出ないけど涙はすごい出る。なんの感情か自分もよくわからないけど泣くことしかできなかった。
「公平くんに会うことはできないんですか…」
「医者によると、しばらく安静にして集中治療室に運ばれたんだ。意識がまだ戻らないから意識が戻ったら姫野に連絡するからそれから会いに行ったほうがいい。そして青森にいる公平の親にも連絡した。」
「そうですか、分かりました。」
わたしは相沢先生からもらったハンカチを右手で握り締めて数学準備室を出た。
玲那に打ち上げは行かないと連絡して、学校から出た。
帰り道、自分のマンションに行くか、公平くんのマンションに行くか迷った。
公平くんのマンションはオートロックで番号を知ってるから入ろうと思えば入れる。でも、公平くんは病院にいる。
でも、ずっと公平くんを感じていたい。
公平くんのマンションについてそのまま立ち止まっていると
「美羽」
振り替えると、颯汰くんがいた。
「どうしたの?」
「美羽こそどうした、立ち止まって」
「公平くんのマンションに入ろうか迷ってて…」
「あー、公平、病院にいるんだよな。」
「そうだよ」
「俺、知ってた。公平が記憶喪失と戦っていること」
「え、なんで…?」
「4人で横浜に行った時、水族館で公平がその場でうずくまったんだ。それでトイレに行って薬飲んでしばらく休んでた。それで俺に言ってきた。「俺、記憶喪失なんだ。」びっくりして声が出なかった。美羽にずっと隠すことはできないけど言うと別れるのが怖いって。」
「別れるわけないじゃん…」
「そうだよな、美羽は公平だよな。ずっと隣にいてやれよ」
そう言ってわたしの肩をポンっと叩いて帰った。
わたしは、自分のマンションに帰ることにした。
1ヶ月ぶりの自分の家。
久しぶりに掃除をしてお風呂を入ってベッドに入った。
いつも右を向けば公平くんがいた。
公平くんの胸に顔を埋めて寝てた。
それが当たり前だと思っていた。
でも当たり前じゃなかった。
公平くんはわたしのことを考えて、1人で戦っていたんだ…
それにわたしは気づけず…
1番近くにいたはずなのに、すごく遠く感じる。
私はベッドでたくさん泣いた。