2度目の初恋
次の日。


今日は体育祭の振替休日。


わたしは朝から相沢先生の電話を待っている。


一向に電話がこない。


午後4時。


電話がかかってきた。


相沢先生から。


「姫野か?」


「はい、公平くん、目覚めましたか?」


「さっき目覚めたとお母さんから連絡をもらった。面会も可能だそうだ。はっきり喋ることもできる。」


「よかった…」


「病室は304号室だ。」


「ありがとうございます。」


電話を切ってすぐ公平くんがいる病室に向かった。


「トントン」


「はい」


中から声がする、公平くんのお母さんかな?


「失礼します。」


中にはお母さんと公平くんがいた。


「美羽!」


「公平くん、大丈夫?」


「大丈夫だよ、心配かけてごめん。」


「ううん、大丈夫。」


「あなたが、姫野 美羽さん?」


「そうです。」


「いつも公平のこと支えてくれてありがとう、公平からはあなたのこと聞いてました。」


「そうなんですね。」


「私は席を外すから、2人で喋ってね?」


「ありがとうございます。」


病室にはわたしと公平くんの2人きり。


「わたしは公平くんとは別れたくない。」


公平くんのお母さんが病室を出た途端にこの言葉が出た。


これがわたしの今思っている気持ち。


「美羽…」


公平くんはわたしの目を見てわたしの名前を呟いた。


「相沢先生から話は聞いたよ、記憶喪失はわたしの想像以上に辛いことだと思う、それをわたしに隠してまでわたしのこと心配させなかったとか……優しすぎるよ、公平くんは……」


「公平くんがわたしと最初に出会った記憶がなくても、わたしは別れないし、寂しいなんて思わないから、わたしはもう離したくないの、初恋の人を…」


「え?」


公平くんは目を見開いた。


「美羽の初恋の人、俺??」


「そうだよ…10年ぶりに会えて嬉しかった。」


公平くんは目に涙を浮かべている。


そして、泣きながらわたしの手を握りしめてずっと泣いた。





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