ずっとおまえが嫌いだった
高校3年。私は留年することになった。
確かに何度か休んだが出席日数は足りてるはずだ。

「お前の頭が悪すぎるからだ」と父は言った

「藤次は学年でもトップなのにねえ」母は
皿にやまもりの唐揚げを持って藤次の前に置く。

私の好物なのに私よりたくさんおかずをもらっていいな…。

父の小言は続いているが耳から抜けていく。

彩也子と孝次と清次は楽しそうに会話をしている。

こいつらはのんきだ、何も考えることがない悩みのないやつらだ。
私ばかりが、こいつらが楽しく過ごせるためのサンドバッグになってるんだ。

         ※


高校4年目、私は19歳になっていた

2歳下の藤治だけは私に優しくしてくれる

父と藤次が口喧嘩をしていた

藤次は大学に行きたいのだが
父はそれに反対して藤次を責めるようなことを言っていた
普通にうちにはそんな余裕はないと言えばいいだけなのに…

藤治は話をすることすらムダだと思ったのか父を無視して部屋へ入る。

その口喧嘩の1週間後くらいからバイトをはじめた。
奨学金を借りて、大学に進学したいから
今から、少しでも蓄えを作っておこうと言うのだ。

バイトをしながら、下の兄弟の世話もした。
成績も学年でトップだ。
おまけに私に勉強まで教えてくれる。

子供の頃は、あんなに憎らしいと思ったのに
今は、藤次が弟であることが誇らしい。

今日は藤次が数学を教えてくれた
教科書を読む横顔は理知的だ。
私は藤次の肩に寄りかかった左手を藤次の腰に伸ばす…
あたたかい…。

私は弟の体温をいとおしく感じた。

ガタッ…

音がしたので振り向くと父がこちらを見ていた。


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