100-3は? ~なにもかも秘密な関係~
月曜日の朝。
古川が、ギリギリの時間に会社に駆け込んだとき、正面玄関のエレベーターはちょうど閉まりかけていた。
「すみませんっ。
乗せてください~っ」
と息もたえだえに叫ぶと、哀れに思ってくれたのか、閉まりかけていた扉が開いた。
「ありがとうございますっ」
と歓喜の声を上げて、乗り込もうとしたあやめだったが、うっ、と足を止める。
開いた扉の真正面に神室基が立っていたからだ。
神室グループ創業者一族の御曹司にして、この会社の専務。
次期社長とも、グループ後継者候補のひとりとも噂される、若きイケメン。
その、いや、あなた、一体、何個、印籠出したら気がすむんですか、と問いたくなる男、基の乗ったエレベーターをうっかり止めてしまったようなのだ。
恐怖のあまり固まるあやめを、エレベーターの中の人々が、バカめ……という目で見ている。