100-3は? ~なにもかも秘密な関係~
基はあやめとともにシアタールームにいた。
酒も映画も高倉が用意してくれていた。
暗い中、映画の明かりで、ちらちらと横にいるあやめを見る。
あやめは画面を見たまま、ぽつぽつと語り出した。
「別に秘密にしてたわけではないんです。
訊かれたら、答えようと思っていました。
自分は専務の許嫁だと」
そうあやめは言う。
「でも、特に気づかれず、訊かれなかったんで。
ああ、やっぱり、この人も私と同じに、許嫁とか別にどうでもいいと思ってるんだな、と思いました」
瞬くような映画の明かりに照らし出されたあやめの横顔は、いつもより綺麗に見えたが、そのことには特に触れずに、基は言った。
「バレてもいいと思ってるのなら、偽名使うなよ」
「いや、そこは恥じらいですよ」
とあやめは言う。