100-3は? ~なにもかも秘密な関係~
「失礼します」
すぐに、あやめが言われたファイルを手に専務室に入ってきた。
「ありがとう」
と基は顔も上げずに言ってしまう。
だが、あやめがすぐに出て行こうとしたので、
「古川」
と呼び止めた。
内心、こいつ、本当は、コガワだよな、と思いながら。
扉のところで、あやめが振り返る。
「新しい職場には慣れたか」
そう言ったのは、違うことを訊くための布石だったのだが。
あやめは何故か身構えたようだった。
……ん?
と思ったあとで、気づく。
そうか。
前回、このセリフを言ったあとに、うっかり、お前が好きだとか、本音をぶちまけてしまったんだな。
今回は大丈夫だ。
お前を怖がらせたりはしないぞ、と基は冷静な上司の顔であやめの返事を待つ。