100-3は? ~なにもかも秘密な関係~
「じゃあなに。
 あんた、将来の自分の夫の会社を見極めに来たの?」

 いえいえ、夫の方を見極めに来たんですよ、と首に太い腕を回されたまま、あやめは思う。

「林さんっ」
と叫ぶ福間の後ろには内藤も居た。

「社内にもうひとり、産業スパイが入り込んでるんですよね? 林さん。
 誰なんですか」

 そんな福間の呼びかけにも答えずに、林と呼ばれた男は視線を左右に動かす。

 ダーク系のスーツを着た、ちょっと整った顔をした林は、目つき以外は意外に普通で。

 高倉に比べたら、かなり小物な感じがした。

 ……いや、高倉は別にスパイではないのだが。

「もう逃げられませんよ、林さん。
 観念して、すべて吐いた方が懸命です。

 その方が、お(かみ)もあなたの処罰に関しては、多少の手加減を加えて、内々に処理してくれるかもしませんよ」

 そんな適当なことを言う福間に、お上って誰だ……とあやめは思っていた。

「というか、あやめを人質に取ったままでは、殺されると思うが専務に」
と内藤が後ろを振り返っている。
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