30
チカはため息をつきながらコーヒーのミルクをたらす。

カフェに来たのだが、ざわざわとした人通りがうっとうしくて
オープンテラス席なんかに座るんじゃなかったと後悔し始める。

大手のデザイン会社に就職してはや7年。
忙しい日々を送りながらも順調にやってきた。

(午前0時で30か…)

今は午後の3時。
30…なんとなく30歳といえば人生の節目を感じる。
子供の頃は自分が30になるとは想像もしてなかったが…。

(実際は30歳なんて平均年齢80歳の時代からすれば、まだ半分の年でもないじゃない)

とはいえ、結婚とか相手はいないのかなどの話を周りの人間から聞かれるのは腹が立つ。

(日本人って変なところでデリカシーがないよなー)

そもそも、チカには子供の頃から結婚願望がなかったのだ。

小学生のころから、デザイン関係の仕事をしてバリバリ働くんだ!
という、願望は人一倍もっていたものの
友達が言う「将来の夢はお嫁さん」という夢は理解ができなかった。

そして、30歳の現在も同じである。

(あー、友達も結婚してるしなー)

高校のころの親友の顔がちらつく。

(いちおう、みんながしてるし私もしなきゃいけないのかな?)

チカが嫌いなのは「みんなもしてるし自分もやる」という行為だ。
同調圧力に負けて人生を決めるかもしれない結婚を無理矢理する…。
それで、失敗した人たちをチカは知っている。

(バカバカしい)

と、虚勢ははってみるけど…

「子供はまだ?孫は?」と親に聞かれるのは心苦しい。
しかし、チカは子供もあまり得意ではない。

やっぱり、無理にでもしたほうが親は安心するだろうから相手くらいはと
彼氏と別れたばかりなので、結婚相談所のサイトを閲覧してみたが…

(会費が高すぎるわ…このお金で近い海外なら行けるじゃん…)

結局、結婚よりも自分のポケットマネーを取った。
チカは趣味ややりたいことにお金を使いたかったのだ。

(私って自分勝手かなあ、子供っぽいかなあ)

いちおう、それなりの蓄えはあるので
年をとってもまあ、なんとかやっていけるだろう。

つまり、チカにとっては「相手、結婚、子供」は不要なのだと感じていた。
加えて愛情よりもお金のほうが大切だというシビアなところもある。
いつか友人が「愛情があればお金はいらないのよ」と言っていたので
「じゃあ、愛情で光熱費を払ってみたらどう?」と切り返して場を凍らせたこともある。

(うわ…もう4時)

チカは気持ちをもて余したまま趣味のショッピングを楽しんだ。
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