死者の幸福〜最期のメッセージ〜
「海彦さんの死因は、有毒植物を摂取したことによる中毒です。しかし、解剖をした時に海彦さんの体からはいくつもの癌が見つかりました。余命はあと数ヶ月といったところだったでしょう。……そんな海彦さんの手には、謎のメッセージが書かれていました。「A」という文字です」

有働海彦は玉子さんと呼ばれていた。鏡の国のアリスには、ハンプティ・ダンプティという擬人化された卵が登場する。有働海彦は、鏡の国のアリスの本に伝えたいことがあると「A」の文字を手に書いたのだ。

「そんな……主人が……癌ですって!?」

信じられない、という顔をする有働真由美に大輔が手紙を差し出す。

「この手紙は、ハンプティ・ダンプティが出てくるシーンに挟まれていました。きちんと読んであげてください」

有働真由美は手紙を受け取り、三人で読み始める。やがて三人の目からは涙があふれていった。

その手紙に、藍たちも目を通す。手紙に書かれていたのは、家族に対する愛だった。
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