死者の幸福〜最期のメッセージ〜
「前田周か……」

大輔も懐かしそうに言った。

前田周とは、付き合っていた元恋人である白鳥(しらとり)うららを解剖した時に会った。白鳥うららはトマトを食べたことによるアナフィラキシーショックによって亡くなったことがわかったのだ。

懐かしいな、と藍は思いながらご飯を口に入れる。そして食べ終わるとすぐに仕事に行く支度を始めた。

藍は法医学研究所の監察医、大輔は捜査一課の刑事とお互い大変な仕事だ。特に隼人が生まれてからは、育児も始まり忙しさはさらに大きくなる。しかし、藍も大輔もこの忙しい日々が好きだ。

「行ってきま〜す!」

手を振る隼人と大輔を見送り、藍も仕事に行こうとかばんを手にした。



「おはようございます」

藍がそう言い部屋に入ると、「おはようございます!」と監察医のみんなが挨拶をする。共に様々な遺体を解剖してきた仲間だ。

「如月、これから解剖する遺体だが二十代の男性らしい。部屋で倒れていたところを家族に発見された」
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