旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「……好き、だよ」
自然と胸にあふれた気持ちを、ぽつりと小声で漏らす。車の走行音に混じって聞こえないかもしれないと思ったけれど、彼の耳にはちゃんと届いていた。
「運転中にそんなこと言うの反則だろ……キスしたくてもできないじゃん」
ため息混じりにこぼした隆臣の横顔は、あからさまに不満げだ。
「ごめん。……帰ったら、いっぱいしよ?」
少しでも機嫌を直してほしくて、恥ずかしいと思いつつもそう口にする。
しかし彼はますます険しい顔になり、少しして赤信号で止まった時には、ハンドルに額を預けてがっくりうなだれてしまった。
「……どうしたの?」
「どうしたのって……無自覚かよ。悪い女」
運転席からじろりと睨まれると、ますますわけがわからなくてムッとする。
私、なにかした? 悪い女だなんて言われるのは心外なんだけど。
「ちょっと、それどういう――」