旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 まぁ、遠巻きに見るだけなら……。そう思いかけるが、明日彼女はオフィスには出勤しないことを思い出す。

「ごめん、そういや明日は彼女のチーム、企画したイベントの当日だから、オフィスどころか東京にいないんだ。朝から埼玉の動物園で――」
『ほう、なおのこと面白そうじゃないか。ガンベロの社長という立場でも、ぜひ視察したい』

 ……というわけで、俺は翌日、父に付き添って理子のイベントを見ることになった。

 会場は満席で、立ち見客もいるほどの盛況ぶり。そして、俺も春までは仕事をともにしていた理子のチームのメンツがステージ上で生き生きと動き回る姿には、『お前らやるじゃん』と、元リーダーとして素直に嬉しく思ったりもした。

 しかし、途中なんとなく空気が変わった瞬間があり、一度は引っ込んだはずの小木さんや秋山たちが少々緊張の面持ちでステージに再度登場すると、俺は直感でなにかがあったのだと察した。隣にいた父もそれは同じだったようで。

「……俺、ちょっと理子の様子見てくる」
「ああ。俺のことは放っておいていいから、彼女のフォローをしてやって」

< 106 / 151 >

この作品をシェア

pagetop