旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
彼女の部屋も別に一応あるが、ベッドを買うのが面倒なのと、俺自身が毎日彼女の隣で眠りたいため、理子の部屋は物置きと化し、俺の寝室がそのまま夫婦の寝室になっていた。
「理子……もう寝た?」
部屋に入ると、遠慮がちに声をかけながらベッドに近づく。しかし返事はなく、すでに眠っているようだ。俺は彼女を起こさないようにそっとベッドに腰かけて、仰向けに眠る安らかな寝顔に話しかける。
「またタイミング逃しちゃったな……。もっと早いうちに、サラッと言っとくんだった」
自嘲しながら、手を伸ばして理子の前髪に触れ、優しく撫でる。ただこうするだけで胸がときめく、そんな幸福は理子を好きになるまで知らなかった。
こんな穏やかな時間を永遠に続けたい。そう思っているからこそ、変に臆病になっているのかもしれない。俺の本当の身分は、彼女の望む〝つつましやかな生活〟とはかけ離れたものだから……。
「ごめんな、理子。……俺、御曹司なんかで」