旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
……彼女を繋ぎとめなくては。心の奥でもう一人の自分が強く叫んでいるものの、〝離婚〟のふた文字に呆然としてしまい、声が出なかった。
そんな俺を無視するように、理子はベッドから下りてドアの方へ歩いていく。その背中に、俺はやっとの思いで声を絞り出し、質問を投げかける。
「俺のことが嫌いになったのか……?」
そんなはずはない。俺たちは、同じくらい互いを想い合っているはずだろ……?
彼女の口から否定の言葉が出るのを期待しながら答えを待っていると、理子は顔だけでこちらを振り向き、けれど俺と視線は合わさないまま言った。
「ええ。そうよ」
そんな……。理子、どうして……。
奈落の底に突き落とされたような絶望感に襲われた俺は、彼女をそれ以上引き留めることができなかった。
やがて荷物をまとめた理子が玄関を出ていってしまっても、その場から一歩も動けず、途方に暮れるだけだった。