旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
●狼の口の中へ飛び込め
理子が家を出ていってから、ちょうど二週間。本人にハッキリ〝嫌いだ〟と言われたにもかかわらず、俺は何度も彼女とコンタクトを取ろうとした。時間が経って冷静になるにつれ、あれが彼女の本心だったとは思えなくなっていたからだ。
……しかし、結局彼女とは一度も話ができていない。電話やメッセージは無視されるし、会社で近づこうとしても、彼女の周りにはいつも誰かしらチームのヤツがいて、俺をけん制するように睨みつけてくるので、その迫力に負けてしまうのだ。
……結局、なにもかも、俺がグズグズしていたせいだ。
大きなため息をつき、オフィスを出る。腕時計を見ると、二十時半を過ぎたところだった。
この頃の俺は理子のことで悩んでいるからか仕事の能率が悪く、毎日のように残業になってしまう。そして仕事を終えると、足が勝手に向かうのはやはり制作二課のオフィスだ。
彼女はもう帰っているとは思うが、もしも会えたら……という期待も拭えず、ダメもとでもオフィスを覗かずにはいられないのだ。