旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「はぁ? よりによって諸悪の根源であるあなたに蟹江さんの居場所を教えるわけないじゃないですか。っていうか、俺たち二日後のイベントの最終調整で忙しいんでもう帰って下さい。祝いたくもない誰かさんの誕生パーティーっつー、マジくそウザイ案件なんですよね」
「千葉。みんなの気持ちを代弁してくれるのは嬉しいが、もう少し言葉を慎め」
「……いーじゃん。今回ばかりはウサギに賛成」
「……うん。私も」
千葉はともかく、かつて一緒に仕事をしていた仲間にすらけんもほろろの扱いを受け、愕然とした俺は無言でオフィスを後にするしかなかった。
……しかし、あそこまで俺に敵意をあらわにするってことは、裏を返せば理子が慕われている証拠。リーダーとして、一生懸命に頑張る彼女が報われたのだと思うと、ずっとそばにいた同僚としては感慨深いものがある。
あのメンバーがリーダーの理子抜きで残業をするなんて、以前は考えられなかったもんな……。
明後日、誰かの誕生日を祝うイベントの最終調整とか言っていたか。しかし、〝マジくそウザイ案件〟とは穏やかじゃない。いったいどんな奴の誕生日を祝うのだろう。
会社の廊下を歩いていた俺は、そこではた、と気づいて足を止めた。