旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「え、じゃあどうすんですか。この、海老名さん火あぶり計画」
デスクに置いてあった書類を手にして、千葉が慌てた声を出す。
火あぶり計画……? なんだそれ。イベントは鷹取佑香の指示通りに進めるんじゃないのか?
「エビ先輩が悪役じゃないなら、チリソースかマヨネーズかで迷ってる場合じゃないかも」
「段ボールで巨大中華鍋を作る必要もない」
顔を見合わせて謎の盛り上がりを見せる三年目コンビの会話から、なんとなく俺に仕掛けようとしていたしょうもない罰ゲームに察しがつき、俺は頬を引きつらせながら尋ねた。
「まさかとは思うけど……その中華鍋で俺を火あぶりにして、エビチリかエビマヨにしてやろうとでも思ってたのか?」
すると、ふたりが息をぴったりそろえて答える。
「「そうです。恥かかせてやろうと思って」」
俺は脱力し、彼らの突拍子もない思いつきにくすくすと笑った。
「あーもー……笑わせんなよ。じゃもしかして、最初から鷹取佑香の計画通りにイベントを企画するつもりはなかったのか?」
その問いに答えたのは小木さんで、けれど彼女の言葉は俺の予想したものとは少々違っていた。