旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
○副社長室の獣
七月二十六日、日曜日。私は昼頃から、チームの皆とともにお台場のリゾートホテル内にあるバンケットルームにいた。
皆インカムを装着し、司会者との打ち合わせ、歌手のリハーサルへの立ち合い、装飾の花や佑香さんリクエストのシャンパンタワーの配置の確認など、それぞれが担当する仕事にあたっている。
収容人数は六十名ほどでそこまで大きくはない部屋だが、個人の誕生日パーティー用にここを借りようとする人はそうそういないだろう。
……佑香さんや隆臣は、本当に別世界の人間なのだ。
ちり、と胸の奥が疼く。しかし私がすべきことは、自分の仕事をまっとうすること。私情を挟むことなく、隆臣の誕生日、そして彼と佑香さんの新たな門出を祝うことに全力を尽くさなければ。
気を引き締めなおして、私は一旦バンケットルームを出る。向かった先は、隆臣とともに今日のパーティーの主役を務める、佑香さんの控室だ。
つい三十分ほど前に到着した彼女は、今頃ウエディングドレスを意識した白いドレスを纏ってメイクを施されているはず。