旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
すると次の瞬間、目の前のドアがバン!と勢い良く開き、中から出てきた佑香さんと鉢合わせした。彼女は私の顔を見るなりぶわっと目に涙を浮かべ、そのままプイっと顔を背けて廊下を走り去ってしまった。
「えっ……?」
なに? いったいどうしたの……?
彼女と一緒にいたであろうヘアメイクスタッフに事情を聞こうと、控室に一歩足を踏み入れようとしたその時。ドン、と後ろから誰かに背中を押され、私は室内に倒れ込んだ。
だ、誰……? とっさに後ろを振り返ると、そこにはバンケットルームで仕事をしていたはずの、見慣れたチームメンバー四人がなぜか全員いて。
「ごめんね理子ちゃん。でも、旦那様にどうしてもって頼まれたから」
萌子さんがそう言って申し訳なさそうに両手を合わせるけれど、まったくわけがわからない。他のメンバーはニコニコしているだけで何も説明してくれず、やがてドアはパタンと閉まってしまった。
えっと……どういうこと? 〝旦那様〟に頼まれたって……。
ドアを見つめたまま呆然としていると、部屋の奥から声がかけられた。
「理子」