旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「わ、たし……お嬢様、とかじゃない、けど、いいの?」
震える声で、なんとかそれだけ問いかける。すると隆臣はたまらずと言った感じに私の背中にギュッと腕を回し、強く抱きしめる。
はずみで私の着けていたインカムのヘッドセットが外れ、カチャンと床に落ちた。
「当たり前だろ。……つーか、俺にとっては誰よりもかわいいお姫様だし」
甘いセリフにかぁっと顔が熱くなって、思わず否定する。
「わ、私、お姫さまってキャラじゃ……」
「いいからお姫様になっとけ。……大好きだよ、理子」
耳元で隆臣がそっと囁き、私は涙ながらに返事をした。
「うん……。私、も……っ。ごめんなさい、嫌いだなんて言って……」
「大丈夫。……あれは理子の本心じゃないって、すぐに気づいた」
しっかりと背中を支えてくれる頼もしい両手。私を優しく包み込む、マリンノートの香水の香り。ぴたりと寄せ合った胸で、呼応するように高鳴るふたつの心臓の音。
互いがひとつに溶け合うように優しく抱き合ったその時間は、この上なく幸福なひとときだった。