旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「ってことは、もしかしたら、今回のイベントの予算も、そのお爺さんに払わせるつもりだったのかな……」
私の前では〝父は鷹取物産の社長!〟〝実家はお金持ち!〟ということをしきりにアピールしていた佑香さんだったけれど、実際はお金に困ってパパ活なんてしていたとは……。
佑香さんの意外な正体に唖然としていると、隆臣が腕時計を見て言った。
「さて、そろそろ時間だ。理子も着替えて」
「え? 着替えるって……」
私が首を傾げていると、隆臣は部屋のハンガーにかけられていた一着の白いドレスを手に取り、私に見せた。
一瞬、佑香さんが着る予定だったドレスかと思ったが、それとは全く別物だった。彼女が着る予定だったのは、あくまでウエディングドレス〝風〟のドレスだったけれど、今隆臣が持っているのは、まるで本物。
たっぷりのレースにキラキラ光るグリッターが目を引く王道のAラインドレスで、これを着たら本当にお姫様気分になれそうなほど素敵だけれど……。
私がぽかんとしていると、ふっと微笑んだ隆臣が、先ほど私が落としてそのままになっていたインカムを拾い上げて、誰かに呼びかけた。
「こっちは準備完了。そろそろ入ってきて」