旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

「俺たち、まだ式挙げてなかっただろ? ……先にチャペルに行って待ってる」

 隆臣はすれ違いざまに私の耳元で呟き、ポンと肩を叩いて控室を出ていった。

 嘘……こんなサプライズ、ずるい……。

 感極まって浮かんだ涙を手で拭い、萌子さんと梢ちゃん、そしてホテルのスタッフに協力してもらいながら、花嫁姿へと変身していった。


 支度を済ませて同じ建物内にあるチャペルまで移動すると、大きな扉の前には緊張の面持ちで立つ父の姿があった。見慣れないモーニング姿は、いかにも新婦の父だ。

「うそ……! お父さん、来てたの……?」
「理子。いやぁ、綺麗になったもんだ。お母さんも中で楽しみにしてるよ、理子の晴れ姿」
「お母さんも……?」

 結婚式を挙げるといっても、急なことだから私の両親にまで声を掛けているとは思わなかった。隆臣ってば、私の知らない間にどれだけ根回ししていたんだろう。

 このチャペルだって、佑香さんに依頼された当初のイベントでは使う予定がなかった。急に借りるなんて普通は無理なはずなのに……。

 どんな魔法を使ったのかと思うほど驚きの連続だったけれど、結婚式には昔から憧れがあったから、素直にうれしい。

 私は父の腕に掴まり、ゆっくりとバージンロードを進んでチャペルの中へ入っていく。

 新郎側の席には、もともと誕生パーティーに招かれていた隆臣のご両親、親戚や友人がそのまま参列しているらしく、大勢の人が座っている。それに対して私の方は、母とチームメンバーのみ。でも、私たちの結婚を祝ってくれる気持ちは、きっと新郎側に負けていないだろう。

< 147 / 151 >

この作品をシェア

pagetop