旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「梅雨って憂鬱……とか思ってる?」
そんな言葉の後、背後でパタン、とノートパソコンを閉じる音がした。私は彼の方を振り向いて、首を横に振った。
「昔は思ってたけど、今は別に。仕事、終わった?」
あの頃の憂鬱から救ってくれたのは、他でもない隆臣だ。彼のおかげで、お天気ひとつで必要以上に気分が落ち込むことは、もうない。
「ああ、終わった。……疲れたから、ちょっと充電させて」
そんな言葉の後、デスクから立ち上がった彼がゆっくり歩み寄ってきて、背後の窓に優しく両手をついて私の体を囲うと、ふわりと甘い口づけをした。
「……理子が秘書って本当にいいな。家に帰るまでもなく、癒してもらえる」
そう言うと、今度は片方の手を私の頬に添え、何度も唇を啄んだ。
「ん……。まさか、それが目的で私を秘書にしたんじゃないでしょうね……」
「あー……そうじゃないとは言い切れないな」
「もう……! 不謹慎な副社長なんだから」
彼を睨みつけながらも、今度は自分から背伸びをして彼の唇にキスをする。ちゅ、ちゅ、と音を立てて重なる互いの唇の隙間から、徐々に熱を帯びた吐息がこぼれ始める。
「……ダメだ。早く帰ろう。このままじゃ不謹慎どころじゃすまない。」
「うん。そうだね」
おでこ同士をコツンとくっつけて、クスクス笑い合った。