旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「……千葉だっけ。離れてくんない? そいつ、俺の妻だから」
俺の、妻……。エビまでなにを言っているのだろう。いつもの悪ふざけ? あ、もしかして千葉くんから私を助けるために、わざと噂に乗っかってるとか……?
確かにこの間千葉くんのことを相談したけれど、だからって妙な誤解を招く発言はやめていただきたい。
「妻って……。蟹江さんの方は心当たりないみたいですけど?」
千葉くんはそう言っていったん私から離れ、エビに挑発的な視線を向ける。
「後輩の前だから照れてるだけだろ。……な、理子」
なんで急に名前呼び……? ちょっと、こっちも変なスイッチ入ってるみたいなんですけど。
「ど、どうしたのよエビ、なにか悪いものでも食べた……?」
見たことのない甘い微笑を浮かべてこちらに歩み寄ってくる彼に、私は怪訝な顔で問いかける。しかし、すっかり甘海老モードに入っているらしい彼の耳に私の言葉は届かず、千葉くんの目の前で私の顎をくい、と掴んで告げる。
「閉じろよ、目」
「え……?」
なぜ、目を閉じる必要が……?