旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「やめてよふたりとも。梢ちゃん、とりあえずその機材確認して片づけて? ひとりじゃ難しいと思うから、松下くんも手伝ってあげてね」
松下くんは私の言葉に黙ってうなずき立ち上がる。同期の彼らには仲良くしてほしいのだけれど、奔放な梢ちゃんとクールな松下くんではタイプが違いすぎるせいかことあるごとに衝突していて、ふたりにはいつもハラハラさせられてばかりだ。
去年だったか、ふたりのケンカを見ていたエビが『あのふたり、なんかきっかけあればくっつきそうなのに』なんて言っていたけれど、私にはそうは見えない。絶対に混ざることのない水と油だと思っている。
デスクを離れていく三年目のふたりを見送っていると、もうひとりのチームメンバー千葉大輝くんが声をかけてきた。
「蟹江さん、今度の動物園イベントの企画書できたので、見ていただけませんか?」
千葉くんはエビには負けるけれどすらっとした長身で、よく日に焼けた肌に明るい色の茶髪、かわいらしい印象の丸い瞳を持つ新入社員。
一見やる気があってまともに感じられるのだが、そのやる気にはどうも下心があるみたいで――。