旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
ズバッと言い切ったエビがおかしくて、くすくす笑う。
あー……なんか、さっきちょっと千葉くんが怖かったのとか、ずいぶん楽になったな。エビがそばにいて、笑わせてくれるおかげかな……。
「ちなみにさ」
それから待たせていたタクシーの後部座席にふたりで乗り込み、千葉くんを待っている間にエビに聞かれた。
「未遂って……マジでなんもなかったわけ?」
まっすぐな眼差しに射貫かれてしまうと、嘘やごまかしは通用しないだろうと観念するしかない。私は千葉くんの部屋であったことを正直に打ち明けた。
「うん、キスもないし……。ただ、ベッドに押し倒されて、改めて告白された。その時の千葉くんの目がちょっとやばい雰囲気だったから、目を覚まさせるために私から彼の手を取って、胸の上に置きつつ『好きにすれば』って挑発したけど……彼の手に意思はなかったから、なにもなかったのと同じ――」
自分の胸に手をあててそう話すと、エビは片手で額を押さえて深いため息をついた。〝聞かなきゃよかった〟――とでも言いたげに。