旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
●可愛い嫁には鯖より指輪
週末の土曜、俺はスーツに身を包んで昼頃に車で理子の実家を訪れた。 理子も会社では着ないようなフェミニンなブラウスとフレアスカートを合わせていて、かしこまった雰囲気が互いに少々気恥ずかしかった。
そんななか、ご両親へ挨拶をして、用意してもらった寿司を四人で食べ、和気あいあいとした時間を過ごした。
理子のお母さんとは初めてじゃないので雰囲気はわかっていたが、お父さんが理子に聞いていた通りの気弱……いや、優しそうな人だったので、夫婦の対比がおもしろく、理子がこの家庭で育ったのかと思うと、感慨深かった。
そして食事が済めば、とうとう理子の引っ越しだ。
といっても彼女の荷物は少なく、衣類や化粧道具などの入ったキャリーバッグがひとつだけ。それをトランクに入れ、家の前でご両親に別れを告げると、ふたりで車に乗り込む。
「忘れ物はなさそうか?」
出発の前に確認すると、助手席の理子は硬い表情で「うん」とうなずいた。
……緊張しているのか? 俺は車をゆっくり発進させながら、軽い調子で尋ねる。
「なに? 今さら俺と暮らすの嫌になった?」
「嫌じゃない、けど……これからのこと、色々考えちゃうから」
前方を向いたまま、小さく呟く理子。