旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
本当はその先まで妄想しそうになっていたが、まだ同居初日だ。あまりがっついていると思われたくないので、コーヒーの香りを嗅いで煩悩を鎮める。
そしてリビングのテーブルに湯気の立つカップを置いた頃、片付けの済んだらしい理子がやってきた。
「あ、コーヒー淹れてくれたんだ、ありがとう」
「いーえ。疲れただろ、座れよ」
理子にソファを勧め、自分もその隣に腰を下ろす。
「でも、エビの方こそ疲れたでしょう、ごめんねお母さんがうるさくて」
「いや、平気」
確かに相変わらずテンションは高かったが、前もって『理子に変なプレッシャーを与えないために、俺の家柄については慎重に時期を見て話すつもりです』と伝え、さらに『お義母さん自身もそのことは知らないふりをしてほしい』と頼んであったため、その他の質問をマシンガンのように飛ばしてきてくれたのは助かった。
そのおかげで、時々お父さんの方が俺になにか聞きたそうなそぶりをしたが、結局は妻の勢いに負けて口を噤む、というシーンが何度かあった。なかなか頼りになるお義母さんである。
……それにしても、最近とても気になっていることがあるんだが。