旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「お前、いつまで俺のこと〝エビ〟って呼ぶ気?」
「えっ……?」
理子がキョトンとした目で俺を見る。そんなこと考えもしなかった、というような顔だ。
「職場では旧姓を使うって決めたけど、結婚してるのは事実で今のお前は海老名理子なんだから、俺をエビと呼ぶのはおかしいだろ」
「そ、そっか……。でも、エビって呼ぶのに慣れすぎてるからな……」
苦笑しながら、曖昧に首を傾げる理子。今さら名前で呼ぶなんて恥ずかしいと思っているのだろうが……呼ばせるぞ、意地でも。
理子とセットで海老と蟹、あるいは甲殻類コンビと会社で呼ばれるのは悪くないが、家でふたりでいる時くらいは、文字通り硬い殻を脱ぎたい。
「……下の名前を知らないっていうオチじゃないよな?」
「う、うん。一応、知ってはいるけど……」
「じゃ、呼んでみて」
「今……?」
上目づかいで〝今は恥ずかしいな〟という顔をされると、許してやるどころか余計に言わせたくなる。
俺は意地悪く微笑み、顔をずいっと至近距離に寄せて告げる。
「い・ま」