旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
○平目の涙と虎の脱走
長い間同期として付き合ってきた海老名隆臣と、こんなにあっさり恋に落ちてしまうとは思わなかった。
でも、もともと人間的に認めていた相手だったから、一緒に暮らしていてもすごく考え方がお互いフィットするし、漠然と心配だった価値観のずれなどもなく、一緒にいて居心地がいい。家では意外と甘えたがる彼の姿も、とても愛おしく感じる。
反対に、会社での隆臣は、ほとんど甘い顔を見せない。
ときどき社内ですれ違ったり、同じ会議に出席したりするけれど、いつも真剣な顔で、先輩や上司にも物怖じせず発言していて、さすがはエリート同期という感じ。
そんな、オンとオフのギャップが激しい彼にはときめかされてばかりで、最初に交わした一カ月の約束は、すでにどうでもよくなっている。
『その間に、お前を必ず落として見せるから』
……結局、あの時の彼の宣言通りになってしまったというわけだ。
なんとなく悔しいような気がしないでもないけれど、隆臣からはちゃんと私を幸せにしようという思いが伝わってくるから、私も彼を幸せにしてあげたい。
そんなふうに思い始めるのと同時に、ずっと低迷期に入っていた恋も仕事も、うまく回りだしたような気がした。