旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 今年は例年より早く梅雨明けし、絶好のイベント日和という感じで青空が広がった、七月初旬の月曜日。

 埼玉県東部の動物園は、平日にもかかわらず多くの家族連れやカップルでにぎわい、イベント会場となるステージの観客席にも、大勢のお客さんが詰めかけた。

 今日の目玉となるホワイトタイガーの赤ちゃんのお披露目は、イベント後半。その前に、私たちの渾身のステージで、お客さんの心を掴まなければならないので、責任重大だ。

 司会・進行は派遣会社に依頼したプロの司会者なので安心だし、リハーサルで一度劇を通しでやってみたところ、動物園スタッフの受けもよかったから大丈夫だとは思うけれど……。

 私は緊張感を抱きつつ、リーダーとして他のスタッフたちとともに、ステージ裏でみんなの姿を見守った。

「この動物園にいるアフリカゾウさんはぁ、私たち人間とは違ってベジタリアン。乾いた牧草、リンゴやニンジン、全部あわせて、こーんなに食べちゃいます!」

 クマに扮装した萌子さんがステージ上の大きな布をめくると、大量のエサが現れて、観客が「おお~」と反応してくれる。

 もともとゆったりした語り口の萌子さんの言葉はとても聞き取りやすいので、人前に立って話すのも案外向いているみたいだ。

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