旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
その後、萌子さんと交代で現れたのは、コブラとマングースというシュールな着ぐるみのふたり。特に、ヘビなのに二本足で立っている梢ちゃんは、登場しただけでも会場の笑いを誘った。
「……あたし、そっちの役がよかったんだけど」
「ふっ。でも案外似合ってるぞ」
「笑ってるじゃん! それに、ヘビ姿が似合うって言われて喜ぶ女子いると思う?」
「……お前、女子だったのか」
「ケンカ売ってる?」
ふたりの間にバチバチと火花が散り、ケンカが始まりそうになったかと思うと、松下くんが急にお客さんの方を向く。
「えー、このように人間同士でも、なんだかコイツ気に食わねえなという存在がいる方も多いかと思うのですが」
その流れるような話術はどこかコミカルで、会場内に小さな笑いがいくつか起こる。しかしそれを見た梢ちゃんが、すかさず黒い微笑みを浮かべて彼をからかう。
「残念、ややウケ」
「……うるさい。自分でもわかってるから指摘すんな」
……なんだか本当にいいコンビ。
ふたりのやり取りは本物の漫才師のように息ぴったりで、私もステージ裏でくすくす笑ってしまった。