旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
萌子さんは目を丸くして、のんびり驚く。
「うそ、それは大変~」
「けどアドリブって……蟹江さんドS……?」
「迷ってる暇はなさそうだ。秋山、やるしかないよ」
梢ちゃんは不満そうだったが、松下くんの言葉に納得して頷いてくれた。そして私はステージに向かう彼らの背中を見送ってから、担当の場所に向かって走りだした。
この動物園は、関東最大級の面積を誇るというだけあって、とにかく広い。隅々までちゃんと見なければ、小さな赤ちゃんトラ一匹なんて、見逃してしまいそう……。
不安と緊張を抱えながらたどりついたのは、アライグマやミーアキャット、モモンガなどの小さな動物が展示されている小獣舎エリア。あまり派手さはないので通りかかるお客さんの数はそこまで多くなく、捜索はしやすそうだ。
「お~い、虎之助や~い」
名前を呼んで出てきてくれるかは不明だが、反応してくれると信じて呼びかける。建物の裏や花壇の中も、身を屈めて念入りに捜す。