旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「も~……みんな心配したんだから……!」
腕の中の虎之助を叱りつつ、スマホを取り出して園長の番号にかける。
『蟹江さん? もしかして見つけたんですか?』
「はいっ! 小獣舎エリアのお土産屋さんで」
『よかった……今からそこに向かいます!』
頼もしい園長の声を聞き、ホッと胸をなでおろす。
こっちは一件落着だけど、ステージ上のみんなは大丈夫だったかな……? そんなことを考えながら園長の到着を待っていると、突然めまいに襲われた。
あれ……もしかして、私、調子悪い……? 片手を頭に添えて不調をやり過ごそうとするものの、やがて体に力が入らなくなった私は、植え込みの中に倒れ込んだ。
うそ……虎之助が、また逃げちゃう……。そうは思っても体は思うように動かず、意識も薄れつつあったその時。
「――理子!」
どうしてかここにいないはずの大好きな人の声が聞こえた気がしたけれど、私はそのまま意識を失った。