旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 目を覚ました時、一瞬自分がどこにいるのかわからず、天井の蛍光灯を見つめてしばし呆然とした。

 ええと……私、動物園にいたはずだよね? それで、逃げ出したホワイトタイガーの赤ちゃんを見つけて、園長に連絡して……。

「理子」

 ぼんやりしていたら急に名前を呼ばれ、同時に隆臣が視界に現れたので驚いた。

「隆臣……ここって……」
「動物園から近い病院。お前、熱中症で倒れたんだ」

 そうか、熱中症……。ちゃんと水分を取っていなかったから……。視線を動かしてみると、腕には点滴が繋がれていた。

 段々と状況が飲み込めて来るのと同時に、当然気になるのはイベントのことだ。

「虎之助はどうなったの? それに、チームのみんなは? 大丈夫だった?」

 矢継ぎ早に質問する私に、隆臣は苦笑してため息をついた。

「落ち着けって。とりあえず、先生呼んで診てもらおう。ちゃんと体が回復してたら帰れるから、話はそれからな」
「……うん、わかった」

 私は渋々頷き、処置室を出ていく隆臣の背中を見送った。すると、入れ替わるようにして見知らぬ男性が入ってきた。

 六十代くらいだろうか、隆臣と同じくらい背が高く、高級そうなスーツを身にまとった、貫禄のある紳士だ。

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