旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
だ、誰……? 医者ではなさそうな見知らぬ人物の接近に戸惑っていると、男性はベッドの傍らに立って口を開く。
「ピアチェーレ、理子さん」
「ぴ、ぴあ……?」
な、なに? 今の、何語? しかも、なぜ私の名前を知っているの……?
頭の中が疑問符だらけでぽかんとする私に構わず、男性はにこやかに続ける。
「きみたちのイベント、楽しませてもらったよ。いたずらっ子のトラくんも含め、四頭のホワイトタイガーの赤ちゃんをそろってお披露目できて、園長も深く感謝していた」
じゃあ、イベントは無事に成功したんだ……。ホッと胸をなでおろしながらも、男性の正体がわからないままではどう反応したらいいかわからない。
「あの、あなたは……?」
遠慮がちに尋ねたその時、隆臣が医師を連れて部屋に戻ってきた。結局謎の紳士の正体はわからないまま、私は医師の診察を受けた。
その間、隆臣が少々険しい顔で紳士に近づき、ふたりはぼそぼそ小声で会話をしていた。
「……余計なこと言ってないでしょうね」
「そう怖い顔をするな。イベントが楽しかったと伝えただけだ」
「ならいいですけど……」