旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「おっさんって……でも、なんでガンベロの社長がここにいたの?」
「……気まぐれで、うちのイベント視察したくなったんだってさ。俺はそのお供に指名されて、だから社長と一緒に動物園にいたんだ」
「そうだったんだ……でも、社長のお供に指名されるなんて、やっぱり隆臣ってすごいね」
きっと、ベニッシモでの彼の活躍がガンベロにまで届いたのだろう。そう思った私は素直に感心したのだけれど。
「いや、別に……。つか、早く帰って休もう。理子は本調子じゃないし、俺もなんか疲れた」
そっけなく言って、先に処置室を出て行ってしまう隆臣。
やっぱり、なんだか機嫌がよくないみたい……。目の前で私が倒れたりしたから、疲れさせちゃったのかな。
自分の体調管理の甘さを情けなく思いつつ、とぼとぼ隆臣の後を追った。
病院を出たのは午後五時くらいだったのだけれど、まだ外は明るく、日中の暑さも残っていた。
動物園に向かう時には社用車のワゴンを使えたから快適だったけれど、これから電車に乗って東京に帰るのかと思うと、少々うんざりする。