記憶の中の溺愛彼氏
記憶が抜けていても昔と変わらない態度で、すごく安心する。
私の為に美亜が色々気遣ってくれて嬉しかった。

打ち解けてきたところで、私は気になっていたことを質問してみた。

「あのね、高校2年の時に、交際したばかりの先輩がいたんだけど、どうなったのか知ってる?」
「あ…いたね。名前忘れてしまったけど…」
「緑川先輩っていうんだけど…」
「あまり詳しくは分からないけど、彼氏が大学入る頃にはすぐに別れたような…?」
「じゃあ、別れた理由とか今はどうしてるのかは知らないよね」
「うん、高校の友達のほうが同じ学校だったら詳しいかもね」
「そっか…」

別れた話を聞いてもピンとこなくて、まだ自分の気持ちは先輩にあるはずなのに混乱する。

「じゃあ、友達に聞いてみる…」
「…余計なお世話だと思うけど、理由があってお互い別れたんだからね。…聞くだけ…ね?」

私の気持ちを見透かしたのか、美亜は心配そうだった。

私だってカッコよくなった翔君がいる訳で…
恋人と言って良いのかはともかく、翔君を傷つけるつもりはない。
だけど、まだ気持ちはあの頃のまま、先輩との始まったばかりの交際で割り切れない。

会ってみて何か思い出すかもしれないし、気持ちを整理する為にも会わないと…ううん、やっぱり会いたいのかも…

心の声に正直になりたくて、私は自分の気持ちに蓋をすることができなかった。

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