記憶の中の溺愛彼氏
自分に恋人がいると分かっていても、実感が湧かなくて困る。
それに…
元カレと会うなんて、翔君はきっと気を悪くするんじゃないかって思う。

「恋人なんだから、隠しごとは良くないよね…」
思わず溜息が漏れる。

翔君が今の自分の彼氏って言われても、そうですかと納得できない…
記憶が戻ったら、元の自分に悪いなって思うけど、それが本音だ。

翔君から今日の夜に仕事が早く終わるからと、会う約束をした。

家の前に見るからに高そうな車がとまり、窓から翔君の姿を確認する。

スーツを身に纏った翔君が車のドアを開けて、私を助手席に乗るように促す。
スマートな流れに、なんだか戸惑ってしまう。

「仕事帰りだから、こんな格好で悪い…」
この前会った時はもっとカジュアルで打ち解けやすかったけれど、確かにスーツ姿の翔君はカッコよくて似合うけど、大人過ぎて別世界の人みたいだ。
自分が着てきた服装も、クローゼットから選んできたものの、大人っぽい格好に抵抗があって、カジュアルになってしまった。

二人が並んだら似合ってない気がする…

< 14 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop