記憶の中の溺愛彼氏
ウジウジ悩んでも仕方ないので、思い切って話してみようと思った。
「翔君…私が高校生の時の記憶に戻っているのは知ってるよね?」
「ああ…」
「だから翔君が知ってる私とは違うというか、翔君の事が好きな私じゃないって、理解してほしいんだけど…」
「…ああ、そう…だな…」
「私と翔君が付き合ってるのは、もちろん知ってるけど、意識の中の自分は緑川先輩と付き合ってる時の自分なの。…だから一度白紙に戻してほしい…というか…」
「………」
「お願いします!」
ペコリと頭を下げて返事を待つ。

長い沈黙が続いて、ふうーっと大きな溜息が聞こえた。
「…高校生の香奈には振られる運命みたいだな」
そう言って翔君は了解してくれた。

もちろん全て関係を断ち切ってしまうわけではなくて、緑川先輩と今度会うことになった事を伝えて、次に翔君と会う時は友達から始めたいと言うことになった。

翔君を傷つけるかなって心配したけど、至って冷静に受け止めていて、私の頭をポンポンとすると
「大丈夫だから」と安心させてくれた。
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