記憶の中の溺愛彼氏
「…そうか、大変だったんだね」
緑川先輩は私の話を真面目に聞いてくれた。
「身体は痛い所はなかった?」
「はい」
「事故の事も覚えてない?」
「はい…」
「じゃあ、高校の頃の事はどれくらい覚えてる?」
「えっと、夏休みに先輩と花火に行く約束をしてて、その前に期末テストが終わらないとって、思ってて…」
「ああ、そっか…まだ俺達が付き合いだした頃なんだ」
「はい…」
「…じゃあ、もしかして今の香奈ちゃんはあの時の香奈ちゃん?」
「はい」
「……俺と付き合ってる頃のまま?」
「…です」
「………」

私の言葉にショックを受けたのか、緑川先輩は黙ってしまったと思ったら、いきなり自分の口を塞いだまま、照れながら話す。
「………あ…ダメだ俺、あの頃の気持ち戻ってきそう!」
「先輩…」
「こんな、…オッサンっぽくなっちゃって、幻滅したよな?」
「いえ、全然…カッコいいままです」
「うれしいな、そう言ってもらえて」
「…大人っぽいけど、素敵です」

翔君も大人っぽくてカッコいいんだけど、緑川先輩は親しみやすそうなお兄さんって感じで、翔君とは違ったタイプ、翔君は完璧すぎて近寄り難い感じ…

静香ちゃんも一緒にいたせいか、緊張は段々解けてきて、自分達の近況を話したりした。

たくさん笑い合って楽しいひと時を過ごして…

話し足りなかったけど、静香ちゃんと大輝さんはこの後予定があるとらしくて、今日はこのまま解散することになった。

お店を出るときに肩をトントンとされて、振り向くと緑川先輩が立っていて連絡先を教えてほしいと言ってきた。
「次は二人で会ってくれる?」
「二人で?」
「嫌?」
「いえ…」


そういって、緑川先輩と次に会う約束を取り付けてしまった…
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