記憶の中の溺愛彼氏

それからは翔君は時間を見つけて、私に会いにきてくれた。私が覚えたスキルをチェックして、まるで資格試験を受けるような感じだ。

根を上げそうになると、
「今、香奈が頑張れないなら、俺の結婚相手として専業主婦になってもいいんだけど？」
なんて言って、逃げ道なんだか、そんな事をしないと分かっているのか、甘い言葉で攻めてくる。

そうやってほぼ毎日、翔君の研修をこなしていった。
最初の頃は、以前の翔君と全然違うし、違和感しかなかったけど、会う機会が増えたせいか少し打ち解けた気がする…

私が手を止めてボーッとしていたら、翔君は「疲れた？」と気遣ってくれて、最後には
「香奈が俺のスパルタ研修を、この一ヶ月間頑張ったら、入社祝いに何かご褒美をあげないとね」
そういってニッコリと翔君は微笑んだ。