記憶の中の溺愛彼氏
いよいよ会社に行く日が決まり、前日は不安で眠れなかった。

化粧をバッチリと決め、クローゼットの中にある以前の自分が着ていた服を選んでみた。

鏡に映った自分は年齢相応の大人の女性だった。

翔君からは、「会社に着いたら受付で名前を伝えると、あとは人事の人が対応してくれる」と教えてくれた。

緊張しながら、大きなビルの中に入ると、広い吹き抜けのエントランスの奥に、受付のカウンターがあり、奥のエレベーターには改札を通さないと入れないようになっている。

受付で自分の名前と翔君から教えてもらった人事担当の方の名前を言うと、「少々、お待ち下さい」と受付の人が確認をしてくれた。

「それでは、この入館許可証を首から下げていただき、改札を通って3階、総務部人事課にお進み下さい」

言われたように改札で入館証をかざし、ピッと機械音がなって改札が開いた。

3階のフロアに着くと館内図があり、人事課を確認した。

「ああ、君が中途採用で入社した白石香奈さんだね。」
「はい。よろしくお願いします」
「今から説明を受けて、書類を受け取り、その後は君の所属先に案内するからね」

言われるままに、封筒に入った書類を受け取り、説明を受けた後、またエレベーターを使って今度は8階へと上がった。


エレベーターを降りて、人事の人について行くと、広い室内へと通された。

朝の就業開始前のせいか、皆の注目を浴びる。

「はい、では朝の伝達事項として今日から入社した白石香奈さんだ。」

「白石香奈です。よろしくお願いします!」

緊張しながらも笑顔で挨拶を心がけた。


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