記憶の中の溺愛彼氏
翔君とまともに会えたのは、その次の日だった。
家の前に翔君の車が止まっていて、車内で私を待ってるようだった。
車の窓ガラスが下がって、私に呼びかけた。

「香奈、話があるんだ…乗って」

無視したかったけれど、気になったから沈黙のまま車に乗り込んだ。

「…香奈に会うの久しぶり」
こっちに顔を向けながら、私の顔をまじまじと見つめてくる。

「…そうだね」

車を走らせながら、翔君は仕事は忙しくないかと聞いたり、お腹は空いてないかと尋ねた。

小腹がすいていたから、軽食のあるコーヒー専門店に入ることにした。

コーヒーをお互い注文して受け取ると、ゆったりとしたソファーに腰を下ろす。

「実は香奈に頼みがあるんだ…」

「何?」

「この前、鶯谷専務との対談があったのは知ってると思うけど、専務が従姉妹で麗花さんという俺の後輩の子と、付き合ってくれないかと言ってきたんだ。」

「………」

「それで一度断ったけど、今度はお試しで一度だけ会ってくれないかと…先輩の顔をたててくれないかと頼まれてね。」

「…で?」

「香奈の話をして、婚約してた話もした。」

「…そっか」

「話は納得したけど、香奈に一度会ってみたいと言われたよ」

「…え…嫌だな」

悪い予感しかしないけど、気さくな先輩だから大丈夫だよって言われて、承諾することにしてしまった。





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