記憶の中の溺愛彼氏
なんで私が翔君の先輩(しかも専務でしょ!)と会わないといけないのか複雑な気分だったけど、会社として今後も取引がある以上、良い関係は築きたいからって言われちゃうと協力しないわけにはいけなくて、私は翔君に服装も選んでもらって指定されたレストランへ連れて行ってもらった。

以前翔君に連れて行ってもらった夜景の見えるレストランとは違って、格式ばった感じの年代を感じるようなお店だった。

もちろん高そうなコース料理が出されるから、緊張しながら食べるしかないんだけど…

翔君の先輩にあたる専務は、軽い挨拶を交わしてから私と翔君の向かいの席に座った。

「そんなに気を張らないで貰えると嬉しいんだが…」

当たり障りのない会話で食事を楽しんだ後、専務は布ナフキンで口を軽く当てながら、ニッコリとそう言って私の緊張を解こうとした。

「…俺の知ってる後輩がずっと思いを寄せてた相手に、一度会いたいと思っていたんだよ。今日は忙しいのにわざわざ悪いね…」

「いえ」

「翔から婚約の話があったと聞いたよ。事故で残念ながら取りやめになったそうだね。」

「そうですね…」

「じゃあ高校生の頃の、翔の話を色々と教えないとね…」

「先輩、何を話すつもりですか?」

「なんだよ、お前でも照れることあるのか?」

仲の良さそうな二人をみて、高校の頃もこんな感じなんだろうなって思った。

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