記憶の中の溺愛彼氏
食事が終わって帰るときに、車を入り口につけるから待っててと翔君に言われた。

運転手付きの車を待っている専務と、店の前で二人で待つことになり、気まずいような沈黙か流れた。

「いきなり不躾で申し訳ないんだが…」
そう言って専務は、私に声をかけた。

「聞いてると思うが、俺の従姉妹が翔とお付き合いをしたいから、協力してほしいと頼まれてね。
…翔には断られたけれど、事故で翔と付き合っていた記憶がないなら、従姉妹にもチャンスを与えて欲しいんだ。」

「そんな事言われても…」

「記憶がないのに、以前の恋人の関係を続けるのは大変だろう?新しく気持ちを切り替えてやり直す方がお互いの為だよ。それに…」

少し躊躇しながら、専務は話を続けた。

「一般家庭の君と結婚をしても、翔にはメリットはないだろ?麗花となら、翔の会社にとっても、今後大きな後ろ盾を持つことになる。今まで付き合ってきたのが今の香奈さんなら、もちろん祝福したいと思うが、翔との絆がまだ浅いなら、麗花との可能性も考えてほしい。」

「………」

専務は私に言うだけ言って、迎えに来た車に乗って帰って行った。
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