記憶の中の溺愛彼氏
私の不安をよそに、ママは私に今日の予定を伝える。
「退院お祝いパーティーをするわよ!ご近所メンバーでね!」
私にかこつけて騒いで飲みたいだけでしょと思ったけど、心配してたから元気な顔を見せてあげてねと言われた。

昔馴染みのメンバーだから気を使わなくていいでしょと、ママは準備をし始めた。

色々なご馳走がテーブルに並び、アルコールを中心にビールやシャンパンが用意されている。

予定時間になると、見慣れた顔がお祝いの差し入れと共に現れた。

家族ぐるみの付き合いのある、おじさんやおばさん。
年齢の近い、近所の元同窓生や先輩後輩達。
元気だった?とか、大丈夫だった?と、声をかけてくれて、私の顔を見ると安心したようだった。

乾杯を済ませてから、私はゆっくりとみんなの顔を見回した。
近所のおじさん、おばさん達はあまり変わってないけど、白髪が増えていたり、少し老けた感じがした。

「なあ、大丈夫だったか?」
肩をトントンとされて、後ろからの声に振り返ると懐かしい顔…

小・中学校からの同級生の樹と、美亜が二人揃って声をかけてきた。

二人とも大人っぽくなっていて、不思議な感じ…
「…そうですね…身体の方はよくなった気がします…」
私の返答に二人は驚いた顔をする。
「やっぱ、記憶戻らない?」
「そう…です…ね」
大人と話すような気分になって、思わずかしこまってしまった。
事情はわかってるみたいで心配そうな顔。

「翔君も心配してたよ。海外出張ですぐには帰れないみたい。」
「そうそう、事故の話聞いたらアイツ急いで帰ってくるってよ。もう空港には到着したから遅れてくるってさっ!いやぁ、彼氏に愛されてるね〜」
「もう、バカ樹!」
口が滑ってしまった樹はバツの悪そうな顔をした。
「翔君て、二つ年下の…?」
ついこの間告白をされた事を思い出した。

どういうことだろう…
いつのまに私は翔君と付き合ってたのだろう。

…付き合ってた緑川先輩は?




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