記憶の中の溺愛彼氏
「やめてーーーーッ!!」

辺りに響くような金切り声で叫んだ彼女は、被害者のように泣き叫んだ。

ザワっと私の周りで人垣ができて、何が起こったのかと野次馬のように集まってくる。

私は彼女の手首を掴んだまま離せなかった。

いきなり豹変した態度にビックリして、固まっていたから。

第三者的な見方をすると、か弱い女性の手首を掴んだ私は、彼女に何か危害を起こす悪者にしか見えないと思う。

「何?どうした!?」

騒ぎを聞きつけて、翔君と専務もそこに駆けつけてきた。何が起こったのか、まだ把握出来ていない様子だった。

偶然なのか、計算なのか分からないけど、彼女は迫真の演技でヒロインを演じる。

「この人がいきなり私に絡んできたの…社長に近づくなって、手首を掴まれて…」

涙ぐみながら少し赤くなった手首を撫でている。

「私と先輩が仲がいいからって誤解されてて、否定したけれど、信じてくれなくて…」

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