rikulu bulls
スッ、と俺は後ろに装備していた、
折りたたみ錫杖を組み立てて構えた。


「ッ!!うわっ!!」


相手の攻撃で少しよろめきながら踏ん張る。


「天病!此奴から離れて『ライクルブルズ』使え!」

「うん!!」


天病は俺達から走って離れて行った。

ボクは天病を見守ると、相手の方へ向き直った。


「ふむ、成る程。確かに彼女を生かせれば
まだ貴方方の方が有利ですねぇ。」

「キミの目的は何なの?」

「ここの乗っ取りですよ。
かつて私はここの生徒でね、
復讐をしに戻って来たんですよ。
それと、言っておきますが、私は男ですよ。
貴女だけで戦えるんですかぁ?」


どうやら俺の過去もご存知のようだった。

俺が男じゃない事も。

まぁ、名前で分かる奴は分かるだろうが。

俺は極度の男性恐怖症だ。

だからいつもは男のフリをして
男と話し合えるようにしている。

天病はこの事を勿論知っている。

だから俺にいつも気を使ってくれてる。

彼奴もかなりの過去があるのにな。


「は、お前が男だったら何だ?
俺には関係ない。」


俺はしらばっくれる事にした。

もし此奴が天津烙先生とグルと仮定して

先生を信じていなければ納得するだろうし。


「おやおや〜強がっても意味は無いですよ〜?
貴女が女性で極度の男性恐怖症なのは分かってますから〜。」


「…やっぱ天津烙先生とグルなんだ。」


「ええ、貴方達の情報なら全てあの方に教えてもらいました。」


「…で、俺はどうすんの?」


「邪魔をするんでしたら尋問してから排除します。」


「邪魔をしなかったら?」


「殺しません。仲間には入れませんがね。」


「ハハ、大丈夫。お前らの仲間なんて
死んでも御免だね。」


錫杖を構えながら俺は相手に向かって
ニヤリと笑った。

それからスッ、と目を閉じて
ゆっくり目を開ける。


「ほう…珍しい眼の色ですねぇ。
白に近い灰色とは。」


そう、俺の眼の色は白に近い灰色だ。

『ライクルブルズ』を持っている奴は
眼の色が変わる。

元の色じゃなくなるんだ。

俺の元の色は黒。

しかし、発動する時、また感情が高ぶっている
時は白に近い灰色になる。


「…じゃあ、俺はアンタの邪魔をするよ。
ここをアンタの好きにさせないようにね。」


にしてもこの長髪男何者なんだ?

俺が知ってる限りじゃ恨みは…

かなり有りそうだな…。

まぁ、俺は男全員が憎いがな。


「そうですか。貴方と分かり合える気がしたのですが
残念ですねぇ。」


「そうは見えないけどな?」


そう俺が挑発すると、男は俺を一瞬で押し倒した。

ザワ…。

俺の中で何かが蘇って来た。


「…は、離れろ!!」


俺は力の限り叫んだ。

トラウマが蘇って来そうだ。

ヂリ…と焼き付くような痛みが頭にくる。


「確か貴女はこうすると弱くなると聞きましたね。」


此奴…!!

俺の弱点を知り尽くしてやがる。


「…五月蝿い!!」


錫杖を振り回そうとしたが、
男が俺の右手を押さえつけた。


「左腕だけでは私に抵抗出来ませんよね?」


ニンマリ笑う男に俺は悪寒を覚えた。

俺が睨んでもうんともすんとも言わず
ただただ笑顔でいるだけ。


「…俺をどうするんだ?排除すると言っていたが。」


睨みながら聴く俺に何の動作もせず、
男は答えた。


「さて、どうしましょうかねぇ。
なんとでも出来ますよ。
先程の彼女に手を出したり−」


「天病に手を出したら殺すぞ。」


ドスの効いた声で言っても、
男は笑っていた。


「今の貴女にそんな事を言われても。
私になんの抵抗も出来てないんですから。」


笑顔で答える男。

確かに正論だ。

俺は此奴になんも出来ていない。


「さて、どうしてあげましょうかね?」


さっきよりも至近距離で俺に言った。

その時、俺の何かが切れた。


ザワ…。


俺達の周りを殺気が包む。

俺の殺気だ。

近くなった事により
俺のトラウマが完全に蘇った。


「離せ。」


さっきよりもドスの効いた声で俺は言う。

理性が完全に吹っ飛んでいった。


「…ッ!!これが貴女の本性ですか。ふふ、
面白い受けて立ちます。」


俺から離れながら言う男は
さっきの余裕が完全に消えている。

俺の殺気にやられたんだろうな。

でも、此奴なかなかやるな。

俺の殺気を受けて立っていられるのは
何人目だっただろうか。

いや、此奴が初めてだな。


「すっちゃん!!」


天病の声が聞こえた。

俺を見て叫んでる。

すると、男が天病に走って
腕を振り上げた。


「おい。俺は天病に手を出したら
殺すと言ったはずだが?」


男の背中に声をかける。

がしかし、男は止まらなかった。

実はころすぞって言うのは


天病がお前を殺すぞって言う意味なんだけど。


…もう手遅れだな。

一応止めるか。

俺は天病と長髪男の間に錫杖を振り下ろした。

おっと、やっぱり此奴殺す気だったな。

顔が狂ってる。

まぁいつも通りだがな。


「このッ…!!」


なんか言おうとしてるが…まぁいいか。

再び俺は錫杖を構え、天病の前に立った。


「どうした?『ライクルブルズ』を使えよ?」


「この餓鬼どもが…!!」


ふん、さっきの仕返しだバーカ。

てか、流石天病。

あの一瞬で彼奴の『ライクルブルズ』を奪ったのか。

これで俺達が勝てる!!

スゥ、と俺の眼が白に染まる。


「『ライクルブルズ−ノーボォ』始め。」


「チッ」


挑発男は俺らの前から消えた。



























数分後。

先生達は無事に戻ってきて、
天津烙先生は捕まって牢にぶち込まれた。

まぁ自業自得ってやつ?

にしてもあの挑発男は何だったんだ…。

あ、そうだ。


「天病、アレは無事か?」


「うん。ほら。」


天病は俺にえげつないものを見せて来た。






…見せろとは言ってない…。
< 4 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop