シャッターを押したら君と恋に落ちる。〜カスミソウの花言葉〜
先輩は俺にだけ気を許していた。
そう思っていたから。

『………どうしたの、飯島さん。そんなに慌てて。何かあったの?』

別人だった。
きっとあれが本来の先輩なんだろう………。じゃあ今までのは………?
今までの先輩は?
あの優しさは嘘だったのか?

『頑張ろうね、体育祭!』

そう笑って言ってくれたじゃないか。
でも………それを壊したのは俺だ。
きっと俺のせいなんだ。

「指原先輩っ!!」

俺にバトンがまわってくるまえに伝えたかった。
おもいっきり息を吸って大声で。

「先輩、俺のこと見ていてください!!絶対に勝ちますから!」

「っ………!」

俺のクラスは現在ビリから二番目。
前には全部で6。
抜かす。

「頑張ってー!!」

いろんな歓声が飛び交うなか俺はバトンを受け取り走った。
先輩のために。
先輩のためだけに。

「………っ!?」

つまずいて転けそうになったその時………。

「頑張って、飯島君!!」

そう確かに聞こえたんだ。
先輩の俺を応援する声が………。

ーグッ

「よっしゃーっ!!」

俺は一位でゴールした。
そしておもいっきり拳を上にかかげた。
と思いきや引っ張られる。

「おめでとうございます、一位………」
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